Sunday, January 27, 2013

Photo Pro: 現像での肌の作り方

SIGMA DP2 Merrillは人を撮るにはとても適したカメラと言えます。搭載されているDPレンズは35mmカメラ換算で46mmという焦点距離で、一般的に標準レンズとされる(人間の眼の見え方に近い)50mmに近い画角は、人物に向けての構図も作りやすく、またF2.8という明るいレンズは、開放からシャープな結像ですし、少し絞っても驚くような描画を見せます。

さらに、すべての光をRGB三色のフルカラーでキャプチャしているMerrrillセンサー(他社のカメラはモノクロセンサーです。本来のカラーで記録しているのはこのカメラ搭載のセンサーだけです)は、細かなディテールを見事に記録していきます。

ただ、このピクセルシャープな特性は、風景や静物などの被写体には素晴らしく向いていますが、人物、特に女性を撮ったときに、あまりにも微細にディテールを描きすぎて「ひどい!」と言われてしまうこともあります。実際にそこにあるものを撮り、記録する能力が高い分、毛穴やシミなども目一杯描いてしまうわけです(笑)。しかし、そういう場合でも、X3F(RAWモード)で撮影しておけば、現像段階でかなり肌の調子を整えることが出来ます。

では具体的に、どうすればいいのか、ということですが、これはひとつの提案ですが、風景などと同じようにRAWデータの現像で、むやみに色温度や露出、コントラストなどを調整し始める前に、まず「ノイズリダクション」という機能で肌の調子を整えてみましょう。

左に貼ったのは調整パレットの下の方にある「ノイズリダクション」部分のキャプチャです。この中の「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の指定を変えるだけで写真の印象は大きく変わります。

この「ノイズリダクション」機能は、肌の調子を整えるために用意されたものではありません。本来は高感度撮影時に発生しやすいルミナスカラー(三原色のにじみのようなもの)などをソフトウェア的に処理するものです。

一方、女性の肌でいう「シミ」のような要素は、表面の肌の色の下層に濁ったくすみのようなものを伴っています。このくすみをデータ的にノイズという風に考えると、本来の使い方ではありませんが「ノイズリダクション」機能は、その低減に機能するのではないか。

僕はそう考えて、まず先に、こうした地肌の処理をできるだけ行なってから、色相やコントラストを考えるというプロセスで現像を行なっています。これはメイクアップアーティストがモデルをメイクしていく考え方と同じです。まずベースメイクを施し、肌全体を整えること。その後で、どの程度の光と影の印象を与えていくか、どう立体的に見せるか、という風に、最終的に仕上げたいイメージに近づいていくわけです。最初からコントラストや色相を調整して四苦八苦するよりも、このプロセスを踏んだ方が、最終的な仕上げへの意思決定にはずっと近道だと感じています。

さて、以下に貼った複数の写真は、「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の二つのパラメータを最大に変えたところでのキャプチャです。すぐ下にある写真がノーマル現像です。その下に「ノイズリダクション」の指定値を変えたものを4枚貼りました。それぞれパレットのボタン位置と肌の質感を参照してみてください。肌の表情が大きく変わることがご理解いただけるかと思います。

とはいえ、写真にはそれぞれ違ったテーマがあり、写真に撮られる女性もさまざまです。ここで示していることがベストな方法とは決して言いません。それぞれに考え、それぞれに現像を試みてください。このブログエントリーは、「ノイズリダクション」という機能が、あまり使われていないようなので記してみました。この機能は、こうした肌の質感調整だけにとどまらず、景色の写真に対しても思いもかけない効果を生む場合もあります。きっと楽しいと思いますので、X3F(RAWモード)で撮影し、SIGMA Photo ProでのRAW現像で色々と試してみることをおすすめします。

ちなみに、この写真の女性は、2012年7月にDP1 Merrillのカタログ撮影のために訪れたオレゴンの牧場の女主人、ジーニー・カーヴァーさんです。この写真はDP2 Merrillで撮りました。強く、優しく、美しく、あらゆる気配りを僕たちに向けてくださった素晴らしい女性でした。






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